近所の迷惑な空き家をどうにかするには?
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近所に放置された空き家があると、倒壊、悪臭、害虫害獣の増加などの迷惑を被ることになります。
このような近所の迷惑な空き家をどうにかするには、どのような手段があるのでしょうか?
空き家の占有者・所有者と交渉する
民法第717条では、以下のとおり定められています。
「土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」
つまり、空き家トラブルの責任は空き家の占有者・所有者にあり、その方に何とかしてもらうよう交渉する必要があります。
行政への依頼でも解決できる可能性がある
国は、行政による対応が可能となるように「空き家対策特別措置法」を平成27年に施行しました。
同法が施行されたことを受けて、各地方公共団体は同法が定める趣旨目的を実現するため、空き家管理適正化条例等を定め、空き家対策計画を策定しています。
そのため、行政による空き家対策特別措置法による対応が期待でき、特に問題がある空き家は行政による立ち入り・指導・勧告が可能となっています。
危険があれば裁判所に訴えることも可能
裁判所に「妨害排除請求権」「妨害予防請求権」の訴えを起こすという解決方法も検討できます。
妨害排除請求権および妨害予防請求権は、物を完全に支配できる物権に当然に認められる権利です。
自分が隣地所有者であった場合、自分の土地や建物に危険が発生する蓋然(がいぜん)性が高い場合は、物権に基づいて、自分の財産を守る権利として、返還請求権、妨害排除請求や、妨害予防請求などが認められます。
したがって、周辺の空き家によってすでに損害は発生している場合は、権利侵害の状態を停止させ、さらに賠償を求めることを検討できる、ということになります。
但し、訴えを起こしても、すぐに裁判所が「改善・賠償せよ」と判決を言い渡してくれるとは限りません。裁判が長期化すれば、その期間も倒壊などの危険にさらされ続けるのは必至です。そこで、これらの訴えに先立ってまずは「仮処分」を申し立てます。
仮処分の申し立てが認められれば、裁判所は暫定的な措置として倒壊などが発生しないように措置を講じる命令を発します。まずは仮処分申立によって、とりあえずの損害発生を防ぎ、その後は妨害排除・妨害予防を求める訴えを起こすのが合理的な手順となります。
裁判所に訴えを起こし、裁判所が「倒壊した空き家を排除せよ」「倒壊防止のための措置を講じること」といった判決を下しても、空き家の所有者がこれに従わないおそれがあります。この場合、裁判所の許可を受ければ、民事執行法171条に基づき、所有者に代わって執行する「代替執行」が可能です。なお、代替執行によってかかった工事費用は所有者の負担とすることができます(同法同条第4項)。除却費用を立て替えた場合は、所有者に請求できるため明細はしっかり保存しておきます。
弁護士に依頼すれば解決が期待できる
自宅の周囲に老朽化した空き家が建っており、倒壊などの危険にさらされている場合は、まずは自治体に対して特定空き家としての認定を申し入れることを検討します。
自治体の対応が思わしくないときは、弁護士への相談をおすすめします。
弁護士が代理人となることによって、行政の介入がスムーズになる可能性があり、行政が対応できない場合でも、裁判所に妨害排除請求権・妨害予防請求権の訴えや仮処分の申し立てをすることが可能です。すでに発生してしまった損害に対する賠償や将来的な危険の排除も検討できます。