広がる空き家の福祉活用～需要と供給のマッチングが大切
公開全国で空き家が増え続ける一方で、高齢者や障害者など支援が必要な住宅困窮者もたくさんいます。
この空き家の福祉への活用を推進しようと、行政も巻き込んだ取り組みが全国各地で展開されています。
1． 空き家を共生ハウスに～としま・まちごと福祉支援プロジェクト
2020年7月に東京都豊島区にオープンした「共生ハウス西池袋」は、空き家を活用したシェアハウス型のセーフティネット専用住宅。
東京都から「居住支援法人」に指定された一般社団法人コミュニティネットワーク協会が運営しており、国土交通省の「令和元年度住まい環境整備モデル事業」にも認定されています。
豊島区は2018年の調査で空き家率が13.3％と23区で最高。
区は共生ハウスのように住宅確保要配慮者を対象にしたセーフティネット専用住宅に家賃補助制度を実施しており、相場の半額程度で入居できるのがポイント。
協会はこのハウスから徒歩圏内に地域交流・見守り拠点として「共生サロン井波池袋」を儲けて入居者らの見守りも行っています。
空き家を住宅確保要配慮者に提供する側にとって不安のタネは家賃の支払いなどのリスクですが、この共生ハウスのケースでは協会が間に入っていることで、リスクを減らす役割を果たしています。
2． 福岡市～社会貢献型空家バンク事業
地域に点在する空き家を福祉拠点として活用するのを目的に、社会福祉法人福岡市社会福祉協議会と一般社団法人古家空家調査連絡会が共同事業体「すまいサポートふくおか」を立ち上げ、高齢者の賃貸住宅住み替えを支援しています。
「安く借りたい」という借り手と「修繕費を借り手が負担してくれれば」という貸し手のマッチングを事業体が引き受け、空き家の用途を福祉利用に絞った試みで、この事業には「赤い羽根福祉基金」が2016～18年度に計2500万円の助成を行っています。
この事業による空き家の福祉活用第1号は、福岡市早良区にあるお堂「利生院」の築100年以上という住居部分を改築し、精神障害者の生活訓練事業所に再生したもの。
また、東区社協に遺贈された築45年の民家は、障害者の自律訓練を兼ねたシェアハウスに生まれ変わりました。
Webサイト「社会貢献型空家バンク」は➀空き家を福祉に活用仕組み➁活用事例➂新着空き家情報－－などを紹介。
ワンストップで税務・法務など専門家が対応できるプラットフォームを整備しており、国土交通省の「空家対策の担い手強化・連携モデル事業」に採択されています。
3． 大阪市～福祉施設や店舗等への用途転用による空家活用の事例集
2022年1月に大阪市から発行された空き家の福祉活用事例集です。
（１）商店街の地域拠点サロン「エフ・エーサロン」（阿倍野区）
特定非営利活動法人エフ・エーが、戦前に建てられた商店街の2軒長屋の1軒を改修。コンサート、落語、食事会などを通じて地域のつながりの場になっています。
（２）子育て支援 寺子屋・地域交流活動（鶴見区）
NPO法人榎本地域活動協議会が無料賃貸された築40年以上の栄商店街の空き店舗を改修。子どもや地域の人たちが集まれるコミュニティスペースとして、商手街の活性化に貢献しています。
（３）デイサービス・地域サロン「デイサービス生活屋・みつやサロンおいで屋」（淀川区）
社会福祉法人博愛社が三津屋商店街の長屋を改修。デイサービスと地域サロンを運営しています。
（４）障がい者福祉施設 「アトリエコーナス」（阿倍野区）
特定非営利活動法人コーナスが、築80年の町家を購入して改修。町家の良さを活かしてアート活動などを通じて自立を行う多機能型事業所として運営されています。
4． まとめ
紹介した事例はほんの一例で、空き家を福祉に活用しようとの動きは全国各地で広まっています。空き家が増加する一方で、介護・生活支援などで空き家の活用に対するニーズが高まっていることが背景にあります。
しかし、日本賃貸住宅管理協会の調査では、大家さんの7割以上が高齢者や障害者のいる世帯への入居に拒否感を持っているそうです。また、空き家を地域交流の拠点に活用できないかとのニーズが増えているにも関わらず、実現には課題が多いと言われています。
この壁を乗りこえるには、需要と供給のマッチングがむずかしさをいかに解決するかがポイントになっています。
空き家なうでは今後も空き家に関する情報、体験談をアップしていきます。
どうぞお楽しみに。
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