なぜ空き家は増えるのか?

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9月13日の神戸新聞朝刊によると、兵庫県姫路市内に相続人が93人という「特定空き家」が見つかったそうです。

昭和初期に亡くなった男性の代から登記がされず、5世代先の来孫(らいそん=曾孫の孫)まで知らぬ間に所有権が広がったためです。

相続が理由の放置空き家の例ですが、空き家が増えるのには
①少子高齢化と核家族化、②供給過剰、③相続、④税制など、さまざまな理由が重なっています。
「空き家なう」では、これまでにも空き家の増える理由を紹介してきましたが、改めて整理してみましょう。


1. 空き家の現状

総務省は5年に1回、「住宅・土地統計調査」をまとめて、この中で全国の空き家の実態を明らかにしています。

直近の平成30年(2018年)版によると、総住宅数の13.6%に当たる848万9000戸が空き家となっています。

5年前に比べ29万3000戸増、空き家率は0.1%上昇し、いずれも過去最高を更新しています。

同調査で総住宅数と総世帯数の推移を見ると、1963年までは総世帯数が総住宅数を上回っていました。
ところが、68年に逆転して以来、総住宅数が総世帯数を上回る状態が続いています。

つまり住宅はずっと供給過剰の状態にあったわけです。


2. 供給過剰

日本の住宅事情は、新築住宅の建設が続く一方で、空き家が増え続けるという、一見理屈の合わない状態が続いています。

国土交通省は毎月「新設住宅着工戸数」を発表していますが、年間の推移を見ると、リーマンショックの2009年に、それまで続いていた100万戸の大台を大きく割り込みましたが、その後も80万、90万戸台を維持しており、直近の2019年は90万5000戸にのぼりました。


3. 少子高齢化と核家族化

総務省は20日、9月21日の「敬老の日」を前に人口推計を発表しました。

それによると、15日時点の65歳以上の高齢者は前年比30万人増の3617万人で、過去最高を更新。
総人口に占める比率も0.3ポイント増の28.7%と過去最高となりました。

国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、第2次ベビーブーム(1971~74年)生まれが65歳以上になる2040年には、高齢者の比率は35.3%に上がるとみられています。

100年に1回の国税調査が9月から10月にかけて実施されていますが、この結果がまとまると、より詳しい人口実態が明らかになります。
人口問題は深刻な社会問題であり、空き家にも大きく関わる問題でもあります。


4. 相続

国税庁の2018年の相続税申告状況によると、被相続人は136万人。

うち課税対象は11万6,000人にのぼり、2015年の税制改正(基礎控除引き下げ)を境に年々右肩上がりに増えています。
相続財産の内訳を見ると、土地と家屋の合計が約4割を占めています。これが空き家の予備軍になるわけです。

姫路市の相続人99人の例は、5代にわたってきちんとした相続が行われず、所有者不明のまま放置された結果、空き家特措法(空家等対策の推進に関する特別措置法)に定める危険な「特定空家等」に指定されたのです。


5. 税制

古い空き家が放置される理由の一つに、土地にかかる税の問題があります。
固定資産税・都市計画税には「住宅用地の課税標準の特例」で表のような基準による減免措置が適用されています。

      区分①              区分② 固定資産税 都市計画税
小規模住宅用地 住宅1戸につき200㎡までの部分 価格×1/6 価格×1/3
一般住宅用地 小規模住宅用地以外の住宅用地 価格×1/3 価格×2/3

ところが、古くなって利用しないからと空き家を解体して更地にすると、減免措置が適用されなくなり、税金がハネ上がるのです。

空き家特措法には、放置された物件が危険と判断されると「特定空き家」に指定され税優遇が適用されなくなるという規定があるのですが、現実には解体に至るケースはそんなに多くないのです。


6. 東京オリンピック2020の延期

東京オリンピック2020はコロナ禍のため来年に延期されましたが、オリンピックが終わると選手村の跡地に総戸数5,632戸、人口12,000人の巨大マンション街「HARUMI FLAG」の建設が予定されています。

都圏では中古マンションの老化が進み、少子高齢化と相まって空き家の増加につながるのではないかとの懸念が広まっています。

 

 

空き家なうでは今後も空き家に関する情報、体験談をアップしていきます。
どうぞお楽しみに。

 

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