空き家の廃墟化を防ぐには

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1. 廃墟化する家々

何も対策をとらなければ、日本の地方都市や多くの郊外には膨大な空き家が生じ、更には廃墟が出現することになると予想されます。

2004年をピークに日本の人口は急激に減り始め、2050年には9,500万人を割り込むと想定されるためです。

また、物流にも決定的な変化が訪れようとしています。

2010年、インターネットの通信販売の売上高が百貨店等の小売の売上高を上回りました。

そのため、今後、郊外にあったショッピングセンターなどはかなりの数が消滅し始めると予想されます。

郊外は人が集まる中心地を失うことになり、その周辺に住む理由は希薄になるため、需要は低下し、その価値は落ち、やがて住人がいなくなり空き家が増え、さらには廃墟へと向かうと予想されます。


2. 世界遺産となっている廃墟

廃墟というとイメージよくないですが、廃墟が世界遺産となった結果、再び人が住み始めている例があります。

イタリア南部のマテーラという街は、8~9世紀のイスラム教徒の侵略や宗教的な迫害を逃れてきたギリシャの修道僧によって、長年にわたり谷間につくられ続けてきた街ですが、1806年頃から人々は街を放棄するようになり廃墟化しました。

しかし、その街並みの美しさが見直され、現在では、この廃墟の町は世界遺産となっており、その独特の空間に新しいタイプの人々が移り住み始めています。

世界遺産は極端な例ですが、たとえ廃墟であっても、そこに人を惹きつける魅力があれば利用価値がでてきます。

廃墟化に向かっている空き家であっても利用価値を見いだすことができれば、廃墟化を防ぐことは可能なわけです。


3. 空き家の廃墟化を防ぐ動き 家いちば 

「家いちば」は、不動産コンサルタントの藤木哲也氏が立ち上げたウェブサイトで、ほとんど広告していないにもかかわらず、2年間の間に鹿児島から北海道までの128物件が掲載され、うち15件が契約に至っている興味深いサイトです。

入札情報サービスを提供する「うるる」がおこなった2016年の「空き家バンク運営実態調査」では、回答した219自治体の空き家バンクの平均成約率は月0.4件ということなので、「家いちば」の成約率はかなり高いことになります。

例えば、佐賀の物件には、60件を超す問い合わせがあり、記事を執筆しているうちに買い手が決まっています。

成約要因の1つは、従来の不動産取引とは違う掲載条件のゆるさにあります。

価格が決まっていなくても、どんな場所でどんなに古くても、残置物が多くて片付いていない状態でも掲載でき、本人の許可があれば親や親戚が所有する物件を無料で掲載できるのです。

また、素人の文章、写真にアドバイスをしたり、校正するなどして読みやすくしている点も成約に寄与しています。

「家いちば」を利用する空き家所有者にとって不動産は重荷であり、資産とは考えていません。

「家いちば」では「もらってくれるならタダでもいい」という例が多く、最近ではタダなうえに「残置物等処理代として50万円を進呈しますという」秋田の物件さえも出てきています。

買う側も、資産としてではなく、利用するものとして不動産を考えており、たとえば、高原にある別荘を購入した人は、「150万円で購入し、10年遊んで、10年後にまた150万円で売ればいい」と考えており、別荘維持のためにかかる管理費は、「遊ぶための費用」と割り切っていたりします。

このサイトでは、売れないとされる借地権付きや築年数の古い物件も扱い100万円前後の格安物件が多いため、成約しやすいのです。


4 . 取手アートプロジェクト

取手アートプロジェクト(TAP)は、取手エリアの空き家を調査し発掘し、この発掘物件に対して、「取手アート不動産」というウェブサイトを通じて、アーティストや建築家によるアイデアやデザインを公募し、出てきたアイデアやデザインプランを、物件オーナー、住人や投資家などへ提案をおこない。

可能なプランについて実現していくプロジェクトです。

TAPは、郊外政策のひとつであり、その工事費の一部を国土交通省が負担しています。


5 . まとめ

日本では、人口の減少、電子商取引の普及にともない地方都市や郊外で空き家が生じ廃墟化が進むと予想されます。

高度成長の時代には不動産は資産でしたが、ごく一部を除き、単に利用する対象であり、利用できなければ負担でしかありません。

格安物件を紹介する「家いちば」、発掘物件に利用方法を提案し、土地の有効利用をうながす「取手アート不動産」のようなウェブサイトは、空き家の廃墟化を防ぐための手段になると思われます。

空き家なうでは今後も空き家に関する情報、体験談をアップしていきます。
どうぞお楽しみに。

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