空き家が美術館に変身?空き家のアートな利活用とは?

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今回は、富山県富山市の岩瀬での空き家を活用した地域再生の事例を紹介します。

富山市の北部に位置する岩瀬は、江戸時代の末期から明治初期にかけて海運で栄えた町です。
加賀百万石の米や材木などを江戸に運ぶ重要な港として、高度成長期まで重要な役割を果たしていました。


富が集まり、得た富により美しいものが買い求められ、
町並みも整えられる経済の循環が生まれていた町でした。

明治期頃の富を成した実業家たちは、その富を自身のためだけに囲い込むのではなく、
社会に還元するという「ノブレス・オブリージュ」という精神を持っていました。

西洋文化として取り入れられたこの精神により、
実業家達は手にした富を、学校建設や福祉事業などに提供しました。


地域の教育や暮らしの質が上がり、人々も富むことにより地域が発展し、
まわりまわって自身の事業にもまた良い影響が回ってくるという考え方が、
ここ富山岩瀬の地域には受け継がれています。

こうした精神に基づく経済の循環は、現代における空き家対策に多く見受けられる資金的なハードルに対して、
解決の糸口となるかもしれません。


実は、 富山市岩瀬の地域再生は、空き家対策や地域再生そのものを最初から目指したものではありませんでした。
2004年に設立した「岩瀬まちづくり株式会社」が事業主体となっています。

岩瀬まちづくり株式会社の代表は、地元の老舗造り酒屋 桝田酒造の社長でもある桝田隆一郎さんです。
もとは、桝田さんが個人やグループ会社で空き家や土蔵の買い取りをしたことから始まりました。
まちづくりをしよう!と意気込んで発足したものではないようですが、
これまでに土地61区画、建物12棟を取得し、再生を図っています。


観光客に楽しんでほしいとか、他の人に対して何かしたいという、
外向きに貢献するような想いからではありません。
自身の酒造会社を子ども達が継いでくれるのかとか、家族が愛着と誇りを持てるのか?という、
利己的な考えからのスタートでした。

美しい上質な場所に身を置くからいいものが作れるし、
いいものを欲しがる人には背景にある文化も含めて良いものでないと、魅力的には映らない。
だから、自分の町をもっと魅力的な場所であってほしい…と語っています。



スタートは物件1つの購入から始まり、
「修復する大工さんの仕事が生まれる」⇒「芸術家の作品を展示したり、自社のお酒をテイスティングができる場所になる」
…という小さな循環が生まれ、それが発展して他にも改修する物件が徐々に増えました。

100年前の旧回船問屋・森家は国指定重要文化財です。
修復には北陸銀行による協力も加わりました。

2005年から富山市で開始した修景等の整備事業も活用して、
外観や内装、構造部なども伝統建築の様式を活かしました。

内装はかつて商売に使っていた道具などの展示に加え、
当時の貿易に関する歴史に関する資料を見たり、解説を聞くこともできます。

また、同森家がかつてニシン貯蔵に使っていたという土蔵群には、
ガラス作家や越中瀬戸焼作家の工房とギャラリーも併設しています。

4棟が連なる間口10メートル、奥行き60メートルの建造物の土壁は老朽化が進んでいましたが、
竹や縄を使って本格的な修復を施しました。

現在も複数の物件で工事は進んでおり、割烹や日本酒飲み屋、イタリアン、
クラフトビールの工場などがオープンに向けて動いています。

空き家なうでは今後も地域の空き家活用事例を紹介していきます。
お楽しみに!

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