なぜ日本の住宅資産額は減損しているのですか?
公開空き家問題の理解にあたっては、
日本の不動産の需給問題を知ることも1つの有効手段でしょう。
競争のある市場では、供給と需要が釣り合うところで
価格と量が決まるというのが、経済学で習う原則というか常識ですね。
工業製品は供給が過剰になると値下がりし、
供給を減らして需給のバランスを取ろうとするのが普通です。
不動産も需要が落ち着くと価格が下がり、
供給を抑える圧力が働くと考えるのが自然です。
ところが、空き家が深刻な問題となっている住宅市場には、
この需給関係の方程式を当てはめるのが難しいのです。
それが空き家問題を一層深刻にしている要因の1つだとも言えます。
1.安定した新築住宅の供給
国土交通省が発表している「新設住宅着工戸数」の推移を見ると、
阪神大震災後の1996年が163万戸、このあと反動減はありますが、
一貫して100万戸台を維持し、
リーマンショックの2009年に大台を下回ります。
しかし、その後も80万、90万台を維持して現在に至っています。
今後も、試算した機関により差はありますが、
毎年60~80万戸の新設着工が続くと予想されています。
2.増え続ける空き家の戸数
一方で、空き家は2014年の総務省発表で820万戸(空き家率13.5%)に達し、
直近の調査では1,000万戸を超えたのではないかと見られています。
日本の人口は減少に転じ、世帯数も減っていきます。
そして空き家は今後も増え続けていくのです。
日本の住宅事情は、優遇税制の後押しもあって新築住宅の供給が続く一方で、
深刻化する空き家への対策も待ったなしという、一見矛盾した状況に陥っているのです。
3.500兆円も減損した日本の住宅資産額
一般社団法人新経済連盟の不動産市場拡大推進プロジェクトチームが
2017年2月にまとめた提言の中で、「不動産市場をめぐる現状の問題」として
一番に「不動産価値の毀損」を挙げ、
「住宅資産額は住宅投資累計より約500兆円以上少ない」としています。
これは、国土交通省が内閣府の国民経済計算をもとに
「1969年~2013年の住宅累計投資額と住宅資産額の差が500兆円」と
はじいた数字を参考にしたもので、分かり易く言えば、
「40年で500兆円が消えた」と話題になりました。
2010年と古い数字ですが、アメリカでは住宅投資額13.7兆ドルに対し、
住宅資産額は14兆ドルで、資産額が3,000億ドルも上回っています。
この数字の差だけを単純に比較はできませんが、
日米の不動産市場には本質的な構造の差があるのではと思われます。
4.空き家活用の可能性
いずれにしても、日本では今後、「今までどおりに価値を維持できる不動産」と
「役に立たない余りものの不動産」に二極化していくのではというのが、
専門家の共通した見方になっています。
空き家対策も、ただ手をこまねいているだけでは、
正常な市場価値を提供できるとは言えないでしょう。
ただ、これまでにいくつか当サイトで紹介したように、
介護施設への活用や、若年ファミリー層に焦点を当てた買取再販ビジネスなど、
空き家ならではの特徴や価格帯を生かしたビジネスも生まれています。
こうした供給過多の時代にこそ、活用できる潜在力を 空き家は持っているかもしれません。
空き家なうでは今後も空き家問題に関する記事を更新していきます。
どうぞお楽しみに。
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